ググッと考える!

大手法律事務所の弁護士から株式会社LiBに移籍! https://www.libinc.co.jp

コロナを生き抜こうとしたらオーシャンズ11みたいなチームになった:「自由と責任」論を超えるもの

新型コロナの恐ろしさが日本中で現実のものになりつつあった数ヶ月前、社内で一つのプロジェクトが始動した。
そのプロジェクトは、世に謳われるような「自由な働き方」を可能な限り推し進めた人材紹介チームを作ろうというもの。

とはいえ、別に「社員に優しい組織を作ろう」という課題感から始まったものではなく、「コロナ禍でも高い成果を出し続けるチームとはどんなものか」を突き詰めて考えた結果、働き方の多様性を広げた形に行き着いたという話だ。

考えてみれば、僕たちLiBは「生きるをもっとポジティブに」をビジョンとして、「女性のライフキャリアを豊かにする仕組み」を色んな角度から作ろうとしている会社だ。
だからこれまでも、「隗(かい)より始めよ」ということで、自分たち自身ができるだけ時間や場所に囚われない働き方を推進しようとしてきた。 

だが今回、僕たちは新型コロナに良くも悪くも大きな変容の機会と必然性を突きつけられ、社内の一つのチームでその先陣を切ることになった。

※           ※           ※

新しい人材紹介のチームは社内の「ハイクラスエージェント部門」として独立し、CxO・経営幹部層や部長・事業責任者の候補となる女性と企業とをつなげるヘッドハンター的な動きをする方針が決まった。

これまでのLiBにはなかった機能を担うチームということもあり、社内から、

  •  大手スタートアップの元CHRO
  •  外資投資銀行出身者
  •  元フリーランス人事&トップエージェント
  •  大手エージェント出身者
  •  人材・組織開発のプロフェッショナル
  •  弁護士(←僕)

などなど、キャラクターの濃いメンバーが集められ、キックオフとなった。

チーム発足時に、事業責任者がオーシャンズ11みたいな、それぞれの専門性を活かしながら協力するプロフェッショナルのチームにしたい」と言っていて、なかなか上手い例えだなぁと思った。
(あと、「オーシャンズ11」の映画は見たことがなかったので、「今度見ておかなきゃ」と思った)

また、はじめに意志を持って定めた大方針は、「企業ニーズの把握や人材の発掘、キャリアのアドバイス・提案、案件の管理に至るまで、一人のエグゼクティブコンサルタントが一貫して行う」というもの。
それが、不確実な外部環境に対峙する中で、各メンバーが最大限のパフォーマンスを出すためにもっとも勝率の高い方法だと見込んだ。

そして、この場所に集まったメンバーが上記の方針で最大の成果を出せる環境が何かを考えた末に、結果としてこんなチームの「働き方」ができあがった。

  •  活動拠点は、東京、鎌倉、名古屋、広島など様々
  •  完全フルリモート勤務もOK。もちろんオフィス利用もOK
  •  週4勤務もOK。平日1日を副業、通学、子育て、ライフワークなどに充てることも歓迎。
  •  フレックスタイム制コアタイム10:30-16:00)←これは全社と一緒
  •  給与体系はかなり「成果報酬型」に近い形。勤務日数や勤務時間、働き方に全く関係なく、成果を出せば出すほど給与が上がる仕組み。

※           ※           ※

ここまでの文章だと、とても個人主義というか、メンバー同士の連携などなくそれぞれが勝手に動く専門家集団的な組織に思えるのだか、実際は正反対だった。

スタートする時に話していたのは、柔軟な働き方で顔を合わせる機会も多くはないからこそ、「個人商店化するのは嫌だよね」ということ。

「柔軟な働き方×成功報酬型の給与体系」となると、往々にして個人の売上成果だけを追い求め、チームで成果を出すという意識が希薄になりがちだ。
下手をすると、ナレッジや顧客資産も自分だけで囲い込む・・・みたいなことも起こってくる。

ただ、それまでのキャリアも専門性も将来のWILLもバラバラなメンバーが集まった「オーシャンズ11」の面々において、唯一(?)、共通の価値観になっていたのが、「チームで成果を出さないとつまらない」ということだった。
それぞれが個人商店になって仕事をしたいなら、わざわざこの会社を選んでいない人ばかりだと思う。

※           ※           ※


ところで、働き方の議論においては、よく「自由と責任」という言葉を耳にする。
「自由には責任が伴う」といったくらいの意味だろうか。

これは完全な主観だけど、働き方的な文脈で使われる「自由と責任」という言葉は、僕はあまり好きではない。
なぜなら、この5文字の後ろからは、こんな囁き声が聞こえてくる気がするからだ。

「自由な働き方を認めてあげるんだから、ちゃんと責任を果たしてよね」

「責任を果たすからこそ自由な働き方が認められるんだ」

「ほ〜ら、責任を果たせていないんだから、自由な働き方なんて認めてあげられないよ」


ちょっと邪推しすぎかもしれないけど、こんなイメージがある(笑)

もっというと、そんな「囁き声」の背景には、

・成果を出すには「一律の働き方」が必要である
・「一律の働き方」という枠を外すと成果が落ちるはずである

という前提があり、さらにもう一歩踏み込むと、

「一律の働き方」に従わない社員は自分本位(=ワガママ)な人間である

という価値観が隠れている気がするのだ。(主義主張というほどの明確なものではなく、あくまで、アタマの奥底に横たわる無意識的なイメージとして)

というわけで、せっかく新しい組織を作ったのだから、個人的には、「自由と責任」という言葉では自分たちのチームを語りたくないなぁと考えている。

※           ※           ※


ここまで書いてきたチームは、立ち上がってまだ数ヶ月。
まだまだ理想とは程遠く、到達したい目標にはぜんぜん達していない。
ただ、少なくとも「打ち出し角度は上々、強い兆しがある」と言って良いと思う。

では、もしこの取り組みの価値が証明され、自信を持って自分たちの話ができるようになった時、自分たちのチームのことをどんな言葉で表そうか。
そんなことを考えてみる。

頭に浮かんだのは、「個性と協働」という言葉だ。

オーシャンズ11」に求められるのは、一人一人の個性を結晶化して、最大の成果を出すことである。
その個性には「働き方」も含まれ、各人がそのユニークネスを最大限発揮すればいい。
個の覚醒、個性の結晶化。
主体性と創造性を解放するのだ。

一方で、僕たちはどこまで行っても、チームワークで成果を出す組織であることは変わらない。「協働」にこそ、自分たちがこの組織に属する意味がある。

個性と協働。
一人ひとりが主体性と創造性を解放し、チームワークで成果を出す組織を作る。

ぜひ、挑戦したいテーマだ。
もちろん、リモートワークやフレックスタイム制の導入にかかわる「最適解」は、業界や職種、社員のスキルセットなどによって大きく異なる。

ただ、「女性のライフキャリアを豊かにする仕組み」をつくる僕たちの会社にとっては、自分たちこそが働き方の多様性や柔軟性を実践し、その有効性を証明しなければ、社会にそれを訴える資格がない

だからこそ、新型コロナの「ピンチ」を「チャンス」に替えることができるこの挑戦を、必ず成功させたいと思う。

 

=====


※ちなみに、「自由と責任」というもとの考え方自体はとても素晴らしいと思っていて、このNETFLIXの本とかはすごく面白かった。

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

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こんなブログも参考まで。

note.com

 

※また、この本では、「流動性・多様性のあるチーム」の典型例として、「オーシャンズ11」型の組織が紹介されている。 

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

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「怒らない子育て」のためのTipsと本質論

緊急事態宣言に伴う「Stay Home」期間が長引く中で、子どものいる家庭では、「つい子どもにイライラして怒ってしまうことが多くなった」という声をちらほら聞く。

では、「怒らない」ためには一体どすればいいのだろうか?「叱る」と「怒る」の違いについて、一応、以下のように定義してみる。

叱る
「してはいけない行動」を子どもがした時に、その行為がNGであることを強く明確に伝えること

怒る
子どもが親の意に反して「〜しない」「〜してしまう(しまった)」ことに対して、親の不快な感情を表現すること

叱るのは子どもの教育にとって必要だが、できれば怒ることなく一日を過ごしたいものだと誰しも思うだろう。

ちなみに、「怒らない」ことの目的は、別に「子どものため」というわけでもない気もしている。(めっちゃ怒られまくった家庭でも、立派に育っている子も多いだろう。)
なので、子どもを怒ってしまったからといって罪悪感や自責の念を持つ必要はない。「怒らない」のはあくまで、家庭の平穏と親の健康のため(笑)

閑話休題

あくまで自分の子どもについてに限った事例だけど、うちでしている工夫を4つほど挙げてみる。全てに共通するのは、「子どもの意識のポイントをずらす」ということだ。

①「アマノジャク返し」の術

「ご飯食べなー」
  「イヤっ!」
「食べなよー」
  「やだー!」
「食べなさい!」
  「イヤっ!」
「じゃあお風呂入る?」
  「やだー!お風呂嫌いー」
「入りなさい!」
  「やだー!もっと遊ぶー」

・・・こんな会話が永遠と繰り返されるイヤイヤ期。
必死で「〜しようよ」と誘導するのに頭から全部否定されるとなかなか辛い。

そんな時は、子どもの「イヤっ!」にあえて親も乗ってみることで、対立構造のポイントをずらす。
具体的には、語気を強めて「食べなさい!」という代わりに、全く同じテンションであえて反対の言葉「食べちゃだめ!」と言ってみる

■こんな感じ
「お野菜も食べなー」
  「食べなーい!」
「野菜食べなよー」
  「やだー!食べない!」
「野菜食べな!」
  「食べない!」
「食べちゃだめ!お野菜食べちゃダメだよ!」
  「・・・????どっちなの〜??(笑)」

子どもの「食べない!」に対して全力で「食べちゃダメ!」と言うと、子どもの頭の中は混乱して、なんかよくわからなくなって笑う(笑)

科学的な根拠はないけど、親の指示や誘導に対して子どもが全部「イヤっ!」というのは、Aという意見に対して「notA」という表現があることを知った子どもが、その表現方法を試して遊んでいるんだと思う。

なので、大人がその「notA遊び」に参加してあげると子どもは楽しくなる。

②「こっちが泣いちゃうよ」の術

■こんな感じ
「お野菜も食べなー」
  「食べなーい!」
「野菜食べなよー」
  「やだー!食べない!」
「野菜食べな!」
  「食べない!お野菜嫌い〜」
「○○が野菜食べてくれないよ〜」(親が思いっきり泣き真似をする。できるだけ子どもの泣き方と同じように泣く)
  「どうしたの?(笑)」
「○○が野菜食べてくれない〜(泣)」
  「食べるよー(笑)」

嘘のような本当の話だけど、こんな感じでうまくいくことが多い。

これも、子どもは親と、「A」と「notA」を言い合うというコミュニケーションの仕方を試しながら楽しんでいる。

今回は「いつもの親子の関係を逆転させる」という意味でポイントをずらす。いつもは泣いている子どもに親が「どうしたの?」と聞いているが、その立場を逆転させると、子どもはそれを面白がる。

③「ハイテンション・ミラーリング」の術

コミュニケーションのスキルで「ミラーリング」というのがある。相手の言動やしぐさを鏡のように真似ることで、親近感を持たせたり好感を抱かせるものだ。

子どもが「やだー!○○したくない!」と駄々をこねまくって、だんだん泣きじゃくりながら次第に何に対して「やだー!」と言っているのかさえわけがわからなくなってきたら、親も「子を上回るテンション」で「やだー!」と駄々をこねてみる。そうすると意外と子どもの方が冷静になって、「なんでー?(笑)」と聞いてきたりする。

■こんな感じ
「早くしなさい!」
 「やだー!しないー!」
「早く!」
 「やだー!嫌いだもん!」
「ほら、早くっ!」
 「嫌だ嫌だ〜」
(大人もハイテンションで子どもを真似る)「嫌だ嫌だ〜」
 「・・・????えー、なんでー??どうしたの〜??(笑)」


これも②と同様、「いつもの親子の関係を逆転させる」という意味でポイントをずらす方法といえる。

 

④「事情聴取」の術

子どもが遊んでいて勝手にこけたり身体をどこかにぶつけたりして、泣き喚いていることがたまにある。一度そういうモードに入ってしまうと手に負えなくなり、いっこうに泣き止まない我が子に親もイライラしてしまうことも…

そこで、うちでは子どもが勝手に泣き始めると、毎回

「どこが痛いの?どうして痛くなったの?パパに教えて」

と言って、子どもにこけたりぶつけたりした時の状況を説明させるようにしている。

子どもが

「こうやって…、こうやって…、ゴチーンてなった」

というような拙い言葉でも、身振り手振りを交えながら状況を説明するようになったら、しめたものだ。それまで子どもの頭の中は「痛みをアピールする自分、親に気にかけてほしい自分」でいっぱいだったが、そんな意識が「痛みが発生した状況を親に知ってもらう」ことに向かい、結果的に痛みのことなんて忘れてしまう。
これも、「子どもの意識のポイントをずらす」一つのテクニックだ。

子どもの説明が一通り終わったら、親は内容をまとめて、

「そっか、○○ちゃんは、〜していて、…となって、☓☓したら、足を柱にぶつけたんだね。それで痛くなって、エーンと泣いたんだね」

と、説明する。

その頃には子どもの意識はすっかりその説明に向いているので、その後は(親に理解してもらえた満足感とともに)「うん、そうなの」と言って、また違う遊びをし始めるはずだ。


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なんか大した事のないTipsばかりですみません。
これらがどこまで他のご家庭でもうまくいくのかわからないけれど、ぜひ試してみてください(笑)

こんな感じの細かいTipsはいくらでもあるけれど、本当に大切なのは、言葉の奥にある、子どもの行動に対する洞察と眼差しだと思う。

以下のようなことを大前提(本質論)の理解として心の内に持っておけば、子どもが思い通りに動かなかったり、何かを壊したり汚したりしても、そもそも「怒り」という感情が生まれてこないかもしれない。

■大前提(本質論)

・大人と子どもは「違う」。
例えば、台所にあるお皿をテーブルに持っていこうとする時、大人にとっては効率(結果)が大切なので、「いかにして1回で多くのお皿を運ぶか」が重要になる。
一方、子どもにとっては、お皿を手に持ち、身体感覚を駆使してバランスを保ちながら手足を同時に動かすというプロセスが大切なので(その動作を通して運動機能を習得していく)、お皿を一枚一枚運んだり、せっかく運んだお皿を元の場所に戻したりする。彼らはその「動作」を満足ゆくまで味わっている。

 

・子どもは、自分の行動や親との会話を通して、「自分の体でできること」や「人とのコミュニケーション」を、遊びながら、試し、確認している。(だから、同じ動作やコミュニケーションを何度も何度も繰り返す。)
それに満足し(「学び」が習得され、身体化されると)、この「確認」作業が完了し、また違うことに興味(こだわり)が移る。

・2〜3歳頃の子どもは、「順番・場所・所有物・習慣」などに対して強いこだわりを持つ。この神秘的な感受性は子どもの成長にとって超・超・超重要である。(これをできる限り尊重した方がいい)

・子どもが不機嫌になるのは、子どもが何かに強い興味や関心(こだわり)を抱いたにもかかわらず、大人がそれに気づかず、その興味を物理的に断ち切ろうとしたためであることが多い

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ポイントは、子どもが「親の言うことを聞かない」という時に、まさにその瞬間、子どもが何を「確認」し、何を「味わって」いるのかを想像してみて、その「こだわり」のポイントを少しずらしてあげるということだ。

子どもの興味のエネルギーに親の都合を正面からぶつけるのではなくて、親の都合も加味しつつ、意識や興味の対象のポイントを少しずらしてあげてるとうまくいくことが多い。

もちろん、それぞれの家庭の事情や子どもの性格によっても、結果は大きく異るだろう。
ぜひ皆さんの工夫も教えてください!

 

働くことと結婚生活の共通点(「恋」が「愛」に変わる的な)

最近、新卒採用活動の一環で学生の方々とお話をしていく中で、ベンチャーで)働くことと結婚生活が似ているなぁと思うことがよくある。
特に以下の3つなんかは、けっこう重要な共通点だと勝手に考えている。

①恋が愛に変わる

品川調べによると、結婚している夫婦の8割は「恋→愛」の順番をたどっている。はじめは

「あなたの全てが大好き!!フォーリンラブ!!!」

というキャンプファイヤーよろしく、感情(=恋)が燃え上がってる時期があって、そこからだんだん、

「炭火で焼くと中までほっこり火が通るんですよ~」

というような、備長炭の赤外線的な感情(=愛)に移り変わっていく。

恋をしている時は、相手の美しい所や良い所ばかりが目に入ってくる。(「あばたもえくぼ」状態)
そして、相手の弱い所やダメな所まで全部ひっくるめて包み込めるようになったら、それは恋が愛に変わってきた証だ。(「あなたのあばたは私のあばた」状態)

働くことも、これと似ている場合がある。

課題を含めて自分の会社を好きだと言えるようになれば、ベンチャーで働くことの醍醐味をだいぶ味わえている状態だと思う。

②全ての行動がメッセージになる

以前、こんな記事を読んだことがあった。

https://m.huffingtonpost.jp/matthew-fray/divorced-me-because-i-left-dishes-_b_9147624.html

流しに置きっぱなしにされた、洗っていないコップ
ーー結婚生活において、時にそれは強烈なメッセージとして受け取られる。

それは、

「本来、家事は全て妻が行うべきものであり、私もその信念に従う者である」
というメッセージとして受け止められる場合もあれば、

「私は、家庭よりも仕事を優先する人間であり、『コップを洗う数秒』よりも、『仕事のために使う数秒』の方が大切である」と受け止められる場合もある。

そのようなメッセージは外壁に染み込む雨水のように、夫婦関係を浸食していく。

これはちょっと大げさな例だけど、結婚生活においては、夫婦それぞれの一挙手一投足(すること/しないこと)が、相手に対するメッセージになる。

会社における意思決定や経営者の言動についても、これに近いことが言えると思う。

深夜まで残って働いている社員に「遅くまでお疲れ様」と言えば、それは他の社員には、「ここは長時間働かないと評価されない会社である」というメッセージになるかもしれない。

全員参加の懇親会を就業時間後に開催すれば、それは、時短社員や就業後に急いで帰宅しなければいけない社員には、「就業時間後にある懇親会に参加できる人でないと、この会社では仲間として受け入れられない」というメッセージになるかもしれない。

考えすぎかもしれないが、こういうことは往々にしてある。
会社経営においても、あらゆる行動や判断が、社員に対するメッセージになる。


そして、会社においても結婚においても、受け取られるメッセージは、それまでの「文脈」によって決まる。

③ルール(管理)よりも信頼でつながる

結婚生活は、「相手を管理するためのルール」がたくさんあるとあまりうまくいかない。(2人がストレスなく生活するための「約束事」くらいはいいけど)

細かなルールで縛るより、大きな信頼感を紐帯とした方が、良質な関係性が生まれる。

会社の経営もきっと同じだ。
ルールが増えれば増えるほど、それを「守る」にも「守らせる」にもエネルギーが必要になる。そのエネルギーは「ルールを守る/守らせる」ためのエネルギーであり、事業成長とは無関係の場合も多い。


仲間の力を100%引き出すためには、信頼を基礎に、ルールは最小限度に絞ったほうがいい。


 

 

・・・長々書きましたが、「仕事の経験は結婚に活きるし、結婚の経験は仕事に活きる」というのが、今日の結論です(笑)

 

オン・ボーディングの成否は「アンフリーズ(解凍)」で決まる

先日、LiBの教育機関「LiBzAcademy」の立ち上げについて書いた記事の反響が大きかったので、今日はその続きを!

LiBzAcademyは、一言でいうと、オン・ボーディング(新規採用した人材の定着、戦力化、活躍までの一連の流れを設計すること)を成功に導くための教育機関だ。今回は、「ベンチャー企業のオン・ボーディング施策において一番重要なことは何か?」というテーマを考えていきたいと思う。

オン・ボーディングといえば、普通は、会社のルールや価値観、業務のやり方を「教える」ことに注意が行きがちだ。しかし今回は、「教える」前にやるべきことがあるという点を強調していきたい。
キーワードは、「アンフリーズ(解凍)」だ。

【アンフリーズ(解凍)とは?】

そもそもLiBのオン・ボーディングのプログラムは、

①アンフリーズ:Unfreeze(解凍)

②チェンジ:Change(変化)

③リフリーズ:Refreeze(再凍結)


というプロセスに沿って設計している。

※「アンフリーズ→チェンジ→リフリーズ」という組織変革プロセスの理論については、リンクアンドモチベーション社の小笹会長が著した以下の書籍がとてもわかりやすい。

  また、「レヴィンの変革モデル」としても有名。

matome.naver.jp

 

note.mu

 

「Unfreeze(解凍)→Change(変化)→Refreeze(再凍結)」というプロセスは、組織を変革しようとする時には、メンバーに変化を求めるだけではうまくいかず、一度「溶かしてから」形を変え、その後にその「形」を固めることが大切だというアプローチだ。

よくある例え話として、「どうすれば、四角い氷を丸い氷へ変えることができるか?」という問いがある。四角い氷を無理やり削ってもきれいな球体にはならないし、下手すると壊れてしまう。
そうではなくて、氷をいったん溶かしてから(Unfreeze=解凍)、丸い型にはめて(Change=変化)、最後にもう一度凍らせる(Refreeze=再凍結)のがベストな方法だというのが答えだ。

組織変革においては、新しい方針や価値観をいきなり押し付けるのではなく、人や組織の気持ちやあり方を一度「溶かす」ステップを経ることで、大きな効果を期待できるというのがポイントになる。

 

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【オン・ボーディングへの応用】

LiBでは、上記の組織変革に関する理論を、そのままオン・ボーディングに応用している。

すなわち、新メンバーたちに、いきなり会社の価値観やバリューを教え込んでも(「Change=変化」を求めても)、それを心から腹落ちさせるのは相当に難しい。
そこでまずは、新メンバーそれぞれに、それまでどんな人生を歩んできたか、自分はどんな時に喜び悲しむのか、前職ではどんな行動が賞賛されどんな禁止事項があったか…などを自己開示してもらう。これが、オン・ボーディングにおける「Unfreeze=解凍」の作業だ。

新しい会社の「正解」をインストールする前に、入社直後の2~3日間を使って、このようなUnfreezeのための時間をあえてとるのがポイントだ。僕たちは、これをラポール・セッション」と呼んでいる。(「ラポール」とは、コミュニケーションや人間関係の土台となる信頼関係のこと)

新しい会社に入るということは、パソコンのOSを変えることに似ている。
それまでWindowsでは起動していたソフトが、OSをMacに変えたとたんに使えなくなってしまうことがある。それと同じで、せっかく優秀な人でも、新しい会社に求められる価値観や振る舞いに適合できなければ、そこで活躍することはできない。

そして、新しい会社の価値観に適合するためには、何よりもまず「新しい会社のOSは、これまで自分が持っていたOSとは違う」ということを理解しなければならない。
自分や他人の自己開示を通じてその認識を徐々に芽生えさせることが、ラポール・セッションの重要な目的だ。
ラポール・セッションは、新メンバーの心理的安全の基礎を築くと同時に、「新しいOS」を受け入れ吸収するための準備体操という意味合いもある。

ちなみに、3ヶ月のLiBzAcademy期間のうち、バリューやカルチャーに関するステップは以下のイメージで設計している。

 

f:id:kshinagawa:20181123165952p:plain


オン・ボーディングが上手くいくかどうかは、初めに効果的なUnfreezeの時間を取れるかにかかっている。ここが、知恵と工夫の発揮のしどころである。

 

ユニコーンを狙うCFOに、人事領域の取締役に求めることを聞いてみた

ここ数ヶ月間、法人営業をやりつつ、CFO直下でLiBの人事領域のミッションを任せてもらっている。
このボールを持たせてもらった時に、CFOに「人事領域の取締役を目指すにはどうすればいいですか?」と聞いてみた。それに対する答えは、従来企業型のいわゆる「人事」像とはちょっと違ったものだった。

【1】CFOから言われたこと

  • 取締役は株主から経営を預けられる立場であるから、常に考えるべきは、株式価値の最大化である。取締役になるためには、自分がLiBで「株式価値の最大化」を実現できる存在であることを証明する必要がある。
  • CFOは、資本市場と対話し、資本市場における競争戦略を実行する。人事管掌取締役は、労働市場と対話し、労働市場における競争戦略を実行できなければならない。
    言い換えると、CFOは、資本市場におけるLiBの将来のワクワクを訴求し(エクイティストーリー)、リソース(お金)を調達し、投資(事業投資、M&A)をすることで企業価値を最大化する。
    人事管掌取締役は、労働市場においてこれとパラレルな役割を担う必要がある。
  • 連続的な成長を作っているだけでは、取締役にはなれない。取締役になるためには、「非連続の成長」を演出できなければならない。

 

この答えはなかなか重かったけど、ワクワクした。
LiBの組織を強くしながら、自分自身もより大きな責任を持たせてもらうことを目指す。そのために、以下のように考えた。

 

【2】人事領域における課題

現状、LiBの人事領域には、以下のような課題があると認識した。(そして、他の多くのベンチャー企業も、同じような課題を抱えているのではないかと思う。)

(1)競争戦略の欠如
・「長期で築くポジショニング」:最終何を目指しているのか?
・「競合視点のある打ち手」:LiBは誰と争ってるのか?
・「時間軸の意識」:どういうスピード感、ステップで作っていくのか?今どこなのか?

これらの点について、確固たる戦略を持っていない。

(2)ファクトの欠如
人事マターを「感覚」で話してしまっている。
定性的な会話が横行し、定量的なファクトに基づく議論が足りていない。科学が足りていない。

(3)緻密さ、しつこさの欠如
人事施策に「こだわり」や「執拗さ」が足りていない。ある種の「嫌われる勇気」といえるかもしれない。
なぜメルカリ社は「Go Bold」と書かれたシャツを着ているか?なぜfreee社は「ジャーマネ」という呼び方にしているか?
人事領域は特に、緻密に設計されたしつこい施策が必要である。

…せっかく大きなボールを持たせてもらったので、これらの課題を打ち返していかなくてはいけない。

 

【3】「非連続の成長」を実現するために必要なこと

上記の課題を踏まえ、人事領域において「非連続の成長」を作り出すために、
労働市場における競争戦略を練る
・ファクトに基づく適切な打ち手を企画し、ファクトに基づく振り返りを行う
・こだわりや執拗さを基礎に、緻密でしつこい実行を徹底する
という3つにこだわって仕事をしようと思った。

反対に、
・長期視点や競合視点なく設計された施策
・場当たり的、もぐら叩き的な施策
・ファクトに基づかない施策の提案
・緻密さの欠いた打ち手・実行の初期段階で運用に回ってないもの
といったものは、極力排除する。人事の仕事はえてして、こんな感じになりがちなので。

人事管掌の取締役には、バックオフィスとしての「人事」とは似て非なる役割が求められることになるようだ。