「怒らない子育て」のためのTipsと本質論
緊急事態宣言に伴う「Stay Home」期間が長引く中で、子どものいる家庭では、「つい子どもにイライラして怒ってしまうことが多くなった」という声をちらほら聞く。
では、「怒らない」ためには一体どすればいいのだろうか?「叱る」と「怒る」の違いについて、一応、以下のように定義してみる。
叱る
「してはいけない行動」を子どもがした時に、その行為がNGであることを強く明確に伝えること
怒る
子どもが親の意に反して「〜しない」「〜してしまう(しまった)」ことに対して、親の不快な感情を表現すること
叱るのは子どもの教育にとって必要だが、できれば怒ることなく一日を過ごしたいものだと誰しも思うだろう。
ちなみに、「怒らない」ことの目的は、別に「子どものため」というわけでもない気もしている。(めっちゃ怒られまくった家庭でも、立派に育っている子も多いだろう。)
なので、子どもを怒ってしまったからといって罪悪感や自責の念を持つ必要はない。「怒らない」のはあくまで、家庭の平穏と親の健康のため(笑)
閑話休題。
あくまで自分の子どもについてに限った事例だけど、うちでしている工夫を4つほど挙げてみる。全てに共通するのは、「子どもの意識のポイントをずらす」ということだ。
①「アマノジャク返し」の術
「ご飯食べなー」
「イヤっ!」
「食べなよー」
「やだー!」
「食べなさい!」
「イヤっ!」
「じゃあお風呂入る?」
「やだー!お風呂嫌いー」
「入りなさい!」
「やだー!もっと遊ぶー」
・・・こんな会話が永遠と繰り返されるイヤイヤ期。
必死で「〜しようよ」と誘導するのに頭から全部否定されるとなかなか辛い。
そんな時は、子どもの「イヤっ!」にあえて親も乗ってみることで、対立構造のポイントをずらす。
具体的には、語気を強めて「食べなさい!」という代わりに、全く同じテンションであえて反対の言葉「食べちゃだめ!」と言ってみる。
■こんな感じ
「お野菜も食べなー」
「食べなーい!」
「野菜食べなよー」
「やだー!食べない!」
「野菜食べな!」
「食べない!」
「食べちゃだめ!お野菜食べちゃダメだよ!」
「・・・????どっちなの〜??(笑)」
子どもの「食べない!」に対して全力で「食べちゃダメ!」と言うと、子どもの頭の中は混乱して、なんかよくわからなくなって笑う(笑)
科学的な根拠はないけど、親の指示や誘導に対して子どもが全部「イヤっ!」というのは、Aという意見に対して「notA」という表現があることを知った子どもが、その表現方法を試して遊んでいるんだと思う。
なので、大人がその「notA遊び」に参加してあげると子どもは楽しくなる。
②「こっちが泣いちゃうよ」の術
■こんな感じ
「お野菜も食べなー」
「食べなーい!」
「野菜食べなよー」
「やだー!食べない!」
「野菜食べな!」
「食べない!お野菜嫌い〜」
「○○が野菜食べてくれないよ〜」(親が思いっきり泣き真似をする。できるだけ子どもの泣き方と同じように泣く)
「どうしたの?(笑)」
「○○が野菜食べてくれない〜(泣)」
「食べるよー(笑)」
嘘のような本当の話だけど、こんな感じでうまくいくことが多い。
これも、子どもは親と、「A」と「notA」を言い合うというコミュニケーションの仕方を試しながら楽しんでいる。
今回は「いつもの親子の関係を逆転させる」という意味でポイントをずらす。いつもは泣いている子どもに親が「どうしたの?」と聞いているが、その立場を逆転させると、子どもはそれを面白がる。
③「ハイテンション・ミラーリング」の術
コミュニケーションのスキルで「ミラーリング」というのがある。相手の言動やしぐさを鏡のように真似ることで、親近感を持たせたり好感を抱かせるものだ。
子どもが「やだー!○○したくない!」と駄々をこねまくって、だんだん泣きじゃくりながら次第に何に対して「やだー!」と言っているのかさえわけがわからなくなってきたら、親も「子を上回るテンション」で「やだー!」と駄々をこねてみる。そうすると意外と子どもの方が冷静になって、「なんでー?(笑)」と聞いてきたりする。
■こんな感じ
「早くしなさい!」
「やだー!しないー!」
「早く!」
「やだー!嫌いだもん!」
「ほら、早くっ!」
「嫌だ嫌だ〜」
(大人もハイテンションで子どもを真似る)「嫌だ嫌だ〜」
「・・・????えー、なんでー??どうしたの〜??(笑)」
これも②と同様、「いつもの親子の関係を逆転させる」という意味でポイントをずらす方法といえる。
④「事情聴取」の術
子どもが遊んでいて勝手にこけたり身体をどこかにぶつけたりして、泣き喚いていることがたまにある。一度そういうモードに入ってしまうと手に負えなくなり、いっこうに泣き止まない我が子に親もイライラしてしまうことも…
そこで、うちでは子どもが勝手に泣き始めると、毎回
「どこが痛いの?どうして痛くなったの?パパに教えて」
と言って、子どもにこけたりぶつけたりした時の状況を説明させるようにしている。
子どもが
「こうやって…、こうやって…、ゴチーンてなった」
というような拙い言葉でも、身振り手振りを交えながら状況を説明するようになったら、しめたものだ。それまで子どもの頭の中は「痛みをアピールする自分、親に気にかけてほしい自分」でいっぱいだったが、そんな意識が「痛みが発生した状況を親に知ってもらう」ことに向かい、結果的に痛みのことなんて忘れてしまう。
これも、「子どもの意識のポイントをずらす」一つのテクニックだ。
子どもの説明が一通り終わったら、親は内容をまとめて、
「そっか、○○ちゃんは、〜していて、…となって、☓☓したら、足を柱にぶつけたんだね。それで痛くなって、エーンと泣いたんだね」
と、説明する。
その頃には子どもの意識はすっかりその説明に向いているので、その後は(親に理解してもらえた満足感とともに)「うん、そうなの」と言って、また違う遊びをし始めるはずだ。
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なんか大した事のないTipsばかりですみません。
これらがどこまで他のご家庭でもうまくいくのかわからないけれど、ぜひ試してみてください(笑)
こんな感じの細かいTipsはいくらでもあるけれど、本当に大切なのは、言葉の奥にある、子どもの行動に対する洞察と眼差しだと思う。
以下のようなことを大前提(本質論)の理解として心の内に持っておけば、子どもが思い通りに動かなかったり、何かを壊したり汚したりしても、そもそも「怒り」という感情が生まれてこないかもしれない。
■大前提(本質論)
・大人と子どもは「違う」。
例えば、台所にあるお皿をテーブルに持っていこうとする時、大人にとっては効率(結果)が大切なので、「いかにして1回で多くのお皿を運ぶか」が重要になる。
一方、子どもにとっては、お皿を手に持ち、身体感覚を駆使してバランスを保ちながら手足を同時に動かすというプロセスが大切なので(その動作を通して運動機能を習得していく)、お皿を一枚一枚運んだり、せっかく運んだお皿を元の場所に戻したりする。彼らはその「動作」を満足ゆくまで味わっている。
・子どもは、自分の行動や親との会話を通して、「自分の体でできること」や「人とのコミュニケーション」を、遊びながら、試し、確認している。(だから、同じ動作やコミュニケーションを何度も何度も繰り返す。)
それに満足し(「学び」が習得され、身体化されると)、この「確認」作業が完了し、また違うことに興味(こだわり)が移る。
・2〜3歳頃の子どもは、「順番・場所・所有物・習慣」などに対して強いこだわりを持つ。この神秘的な感受性は子どもの成長にとって超・超・超重要である。(これをできる限り尊重した方がいい)
・子どもが不機嫌になるのは、子どもが何かに強い興味や関心(こだわり)を抱いたにもかかわらず、大人がそれに気づかず、その興味を物理的に断ち切ろうとしたためであることが多い
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ポイントは、子どもが「親の言うことを聞かない」という時に、まさにその瞬間、子どもが何を「確認」し、何を「味わって」いるのかを想像してみて、その「こだわり」のポイントを少しずらしてあげるということだ。
子どもの興味のエネルギーに親の都合を正面からぶつけるのではなくて、親の都合も加味しつつ、意識や興味の対象のポイントを少しずらしてあげてるとうまくいくことが多い。
もちろん、それぞれの家庭の事情や子どもの性格によっても、結果は大きく異るだろう。
ぜひ皆さんの工夫も教えてください!